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序章

 本書は、急速に拡大しつつある新しいUNIXユーザーに、UNIXワークステーション上の リレーショナル・データベースを用いれば、本格的なビジネス・アプリケーション開発 が、UNIXワークステーション上で可能であることを示すことを一つの目的としている。  本書のもう一つの目的は、従来からのメインフレーム・ユーザーに対して、 コンピューターのビジネス・ユースの少なくない分野で、UNIXワークステーションが メインフレームに代わり得るしい可能性を持っていること示すことにある。

 UNIXワークステーションは、これまで、EWS(エンジニアリング・ワークステーショ ン)とも呼ばれた時期があったことが示すように、大学や企業の研究部門から始まり、 CAD・CAM等や、ソフトウェア開発のプラットホームとして、エンジニアリング分野で急 速に普及してきた。しかし、近年、ワークステーションは、その応用分野を大きく拡大 しつつある。不断の技術革新によって、ワークステーションの性能は、かってのメイン フレームを上回る程に向上し、市場での激しい競争は驚くべき低価格化をもたらし、 いわゆる「ダウンサイジング」の流れは、市場に大きなインパクトを与えつつある。  こうしたワークステーションの市場拡大の最大の焦点は、ワークステーションが、 メインフレームの「牙城」であったビジネス・ユースの世界に、どの程度進出できるか ということである。

 ビジネス・アプリケーションのソフトウェアの世界では、PC・ワープロのオフィス・ ユースでの一般化を背景として、新しいユーザーが大量に市場に登場している。こうし た新ユーザーは、新しい、「ユーザーに優しい」(しかし、「開発者には高度で難しい 」)インターフェースを求めている。こうした新規ユーザーの大量参入、ハードウェア のコスト・パフォーマンスの飛躍的向上に基づく、処理の高度化の要求は、従来からの 生産性向上の要求に加えて、ソフト開発の現場に多くのことを求めている。 こうした課題に対する、現時点での有力な回答の一つは、UNIXワークステーションの ネットワーク上で、ビジネス・アプリケーションを開発することであり、こうした方向 には、次のようなメリットがあると我々は考えている。

 第一。大規模で高性能で信頼性の高いシステムが、低コストで構築可能であること。 大型機のユーザーの中には、ワークステーション上のシステムに対して、信頼性の面で 危惧の念を持っている人が少なくないと思う。本書では、そうした疑念に出来る限り 答えようとした。
 第二。メイン・フレーム上のシステムに対して、ユーザー・インターフェースが大幅 に改善されること。UNIXワークステーションの世界では、常識となったウィンドウ環境 が、初心者のオペレーターにとっても、画面を設計するプログラマーにとっても、シス テムを開発するエンジニアにとっても、使いやすいこと。我々の確信は、こうした、 より使いよい操作環境への変化は非可逆的に進行するであろうということである。
 第三。適当な開発用ツールを用いれば、旧来の方式と比べて大幅な開発工程の短縮が 可能であること。
 第四。多くのUNIXデータベースは、言語として業界標準のSQLを採用しており、 メインフレームからの移行が比較的容易であること。

 本書の前半部は、初めてリレーショナル・データベースに触れるユーザーを想定した SQLの入門編である。select文から記述が始まるというスタイルは、本書独自のもので あるが、データベースを読み出すだけの一般ユーザーから全権を持つシステム管理者に いたる、データベース・ユーザーの自然な階層に従がおうというものである。先にも述 べたように、現在、商用のUNIXデータベースは、ほとんどすべての製品がSQLを採用し ている。本書の記述は、SYBASEのTransact-SQLを基本としているが、DB2,INFORMIX, INGRES,ORACLE等、他のSQL処理系でも共通に使えるはずである。
 本書の後半部は、データベースの一定の知識を前提として、ワークステーション上で のアプリケーション開発の実際を述べてある。本書のこの部分の記述は、sybaseに強く 依存しているが、メインフレーム等、他のデータベース・ユーザーにとっては、むし ろ、前半部より多くの情報を含んでいる筈である。UNIXワークステーションでのデータ ベース利用を検討している読者の精読を期待したい。

maruyama@wakhok.ac.jp
1995年02月10日 (金) 00時49分16秒 JST