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テーブルの満たすべき要件

リレーショナル・データベースのテーブルが満たすべき基本的な要件の一つに、 「テーブル中の行は重複がなく、各行は、テーブルの中で一意に指定できること」 というものがあった。
テーブル中の行に重複が無いという条件は、テーブルの中の行の位置は意味を持たない という条件とともに、数学的な「関係」の定義から形式的に導くことも出来る。すなわ ち、関係は、関係を満たす要素の組(tuples)の集合と定義されるから、これらの条件 は、集合の要素に重複はなく、集合にとっては、ある要素がその集合に属するか否かの みが本質的であって、ある集合の要素の枚挙の順番は意味を持たないといった、集合の 周知の性質の自然な帰結と解釈されうるのである。

実際には、データベースの上でこれらの条件が、形式的な議論を離れて、どのような意 味をもっているかは、別の機会に触れられるであろう。

ここでは、後半の、「一意に指定可能」という条件に注目しよう。この条件は、実は、 単なる形式的な条件ではないのである。なぜなら、形式的には、無限集合ならいざ知ら ず、データベースが扱う有限集合においては、いかなる要素も、一意に選択可能である と見なされるうるからである。形式的には「自明」なこの条件は、しかしながら、デー タベースの形式的な理論においては、本質的な役割を果たすのである。いうまでもな く、「行に重複が無い」ことは、「行が一意に指定可能である」ことの一つの帰結に他 ならない。ここでの問題は、「有限集合から、ある要素を一つ選び出すことが形式的に は可能であるか否か」といった、抽象的には自明なレベルにあるのではなく、「リレ ーションを表すデータベースのテーブルの中から、特定の行を選び出す具体的な方法 があるか否か」といった極めて具体的なレベルにあるのである。

maruyama@wakhok.ac.jp
1995年02月10日 (金) 00時49分16秒 JST