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進行するコンテンツの共有(市民講座第3回)

2006年6月22日
稚内北星学園大学 安藤 友晴

コンテンツの共有

「コンテンツ」とは何か

今回は、最近のインターネットの「コンテンツの共有」について理解していただきます。

では、まず「コンテンツ」とは何なのでしょうか?

インターネット上の百科事典「Wikipedia」で調べると、「コンテンツ」という言葉は次のように定義されています。

コンテンツとは、あるものの「内容」(≒情報そのもの)のこと。

いまひとつわかりにくいかもしれませんね。例えばインターネット上であれば、次に挙げるものは「コンテンツ」と呼ばれています。

パソコンや携帯電話のような「ハードウェア」は、コンテンツとは呼びません。コンテンツとは、こうしたハードウェア上で動作する、何らかの創作物であると考えてください。

コンテンツの共有とWeb

インターネット上の代表的なサービスであるWeb (ホームページ)は、もともとコンテンツの「共有」に適したメディアになっています。

例えば、みなさんが自分の「Webページ」を開設したら、そのことはWebページに記載されている内容を世界中に公開することを意味します。

このように、Webを使って情報・アイディア・考え・作品などを他者に公開することができます。公開されたモノは、他の誰かと共有され、どんどん発展していきます。そして、公開することがきっかけで、他者とコミュニケーションが産まれることもあるでしょう。

そして、最近のインターネット上では、単にWebページに情報を載せるよりも、利用者が参加しやすく、コンテンツを共有しやすいしくみが登場してきています。

今回は、そうしたしくみについてご紹介していきましょう。

Webを使ったコンテンツの共有

ブログ (Blog)

まずは「ブログ(Blog)」です。

新聞などではブログのことを「日記風ホームページ」などと解説していることが多くあります。その解説のとおり、ブログでは、自分の日記・考えたこと・作品などを発表することができます。また、そうしたブログの記事について、他者が「コメント」を付けたりすることもできます。

しかし、こうしたことは、ブログを使わなくても実現できます。例えば、ブログが普及する以前にも日記を作成して公開できるWebページは存在していましたし、「掲示板」などを使って他者の意見を集めることもできます。

では、ブログでなければできないというような機能はあるのでしょうか?

例えば「トラックバック」というしくみはブログならではのものです。では、トラックバックについて解説しましょう。まず、自分でブログの記事を書きます。そして、その記事に関係していると思われる他人のブログの記事があったとします。トラックバックとは、その他人のブログの記事に、自身のブログの記事へのリンクを作成することです。これは、相手の承諾なしに行うことができます。

このトラックバックのしくみを使うことで、関連するブログの記事どうしが繋がっていきます。自分がまったく知らない人のブログと繋がっているかもしれません。こうしてブログの記事の連鎖が起こるため、ブログの利用者はその記事に関連するさまざまな出来事や意見に触れることがかんたんにできるようになります。こうしてブログの世界がより豊かなものになっていくわけです。

参考リンク

眞鍋かをりのココだけの話

RSS/Atom

「RSS」とは、ホームページやBlogなどの「更新情報」のデータのことです。RSSとよく似たものに「Atom」というものがあり、こちらもよく使われています。

よく見るページのRSS (Atom)を「RSSリーダ」と呼ばれるソフトウェアに登録しておくことで、更新情報の一覧が作れるようになります。

RSSリーダは、複数のサイトをまとめて登録できるので、サイトの更新情報を手早くチェックするのに役立ちます。

参考リンク

はてなRSS

Google Maps

Webページから利用できるGoogleの地図サービスが「Google Maps」です。

Google Mapsは、Googleのページから利用するだけでなく、自分のWebページから地図データを読み込んで使うこともできます(プログラミングが必要になります)。「はてなマップ」もその一例です。

また、自分の「お気に入りスポット」を他の人と共有したりすることもできます。

参考リンク

Google Maps
はてなマップ

Wiki (ウィキ)

普通のWebページは、特定の人だけがそのWebページを編集することができます。ところがWiki (ウィキ)は、誰もが編集できるWebページなのです。

中でも、「誰もが編集できるインターネット上の百科事典」である「Wikipedia」というサイトが有名です。

ソフトウェアの世界には、「目玉が十分あればどんなバグも深刻ではない」という有名な言葉があります。ここで出てくる「バグ」とは、「プログラムの間違い」のことを指します。つまりこの言葉は、「チェックする人がたくさんいれば、どんな間違いだって直せますよ」ということを意味しているのです。Wikipediaは、まさにこうしたことを実践しているプロジェクトです。Wikipediaにはときどき間違いもありますが、インターネット上の無数の人々がチェックしていることもあって、非常に充実した百科事典になりつつあります。

Wikipedia

ソーシャルブックマークサービス

わたしたちがWebブラウザを使ってホームページを見ているとき、気に入ったWebページがあるとそのページを「お気に入り」や「ブックマーク」に保存します。

「ソーシャルブックマークサービス」は、こうした「お気に入り」や「ブックマーク」をインターネット上に置き、他者と共有しよう、というサービスです。

あるWebサイトはどのくらいの人がブックマーク登録しているのか、といったことや、ある人が関心を持っているブックマークリストを眺めてみる、といった使い方ができます。

参考リンク

はてなブックマーク
del.icio.us

写真共有サービス

「写真共有サービス」は、その名のとおり、デジタル写真をWebページ上にアップしてその写真をみんなで共有する、というサービスです。

このとき、写真のデータだけでは必要な写真を検索することができないので、写真データに「タグ」を追加するようにします。例えば稚内の抜海港に来たアザラシの写真であれば、「稚内」「抜海」「アザラシ」といったタグを付けるようにします。

当然ながら、個人のプライバシーや肖像権を侵害するような写真はアップしないように気をつけましょう。

はてなフォトライフ
Flickr

Webを使わないコンテンツの共有

以上、Webを使ったコンテンツ共有のサービスについて紹介してきました。しかし、コンテンツを共有するには、Webを使わない方法もあります。代表的なのは「P2P」というものを使う方法です。

P2Pについて解説する前に、Webのしくみについて整理しておきましょう。

クライアント・サーバ

Webに限らず、インターネットのほとんどのサービスは、「クライアント・サーバ」というしくみが使われています。

図1[クライアント・サーバ]は、「クライアント・サーバ」を図にしたものです。

クライアント・サーバ

クライアント・サーバでは、「サーバ」と呼ばれるコンピュータがデータを蓄積してサービスを提供します。そして「クライアント」は、Webブラウザが動いているコンピュータのことです(本当は、コンピュータではなく、コンピュータ上のWebブラウザのプログラムがクライアントになるのですが、ここでは簡単にコンピュータがクライアントであると言い切ってしまいます)。通常は「ひとつのサーバ」に対して「多数のクライアント」が存在します。クライアントがサーバと通信するので、その中で「誰が」「何をやったか」管理しやすいのが特徴です。

P2P (Peer to Peer)

では次に、P2P (Peer to Peer)について説明しましょう(図2[P2P (Peer to Peer)])。Peerは「コンピュータ」のことです。

P2P (Peer to Peer)

P2Pには、サーバとクライアントといった役割分担はありません。それぞれのPeer(コンピュータ)の役割が同じになっています。Peerは、多くの場合、個人所有のパソコンです。

特定のサーバがないため、どこにどうファイルがコピーされたかわかりにくく、管理しにくいという特徴があります。その結果、強い「匿名性」を得られる場合もあります。

ウィニー (Winny)

「P2P」と聞くと、最近、個人情報が入ったファイルなどの流出事故で世間を騒がせている「ウィニー(Winny)」というソフトウェアのことを思い出す方もいるかもしれません。

「ウィニー」は、ファイル共有を目的としたP2Pベースのソフトウェアです。ウィニーの通信が暗号化されており、匿名性が高くなっています。つまり、誰が何をやったかわかりにくい構造になっています。

そのため、(著作権上)違法なデータがウィニーで流されるようになりました。そうしてウィニーの利用者が爆発的に増えていったわけです。さらに悪いことに、ウィニー利用者のパソコンが(ウィニーとは別の)ウィルスに感染して、パソコン上のデータがウィニーで公開されてしまう事故が多発しています。ウィニー上でいちど公開されてしまったデータは、もう取り消すことはできません。

ウィニーについては、逮捕者も出ています。まず、著作権者に無断で映画ソフトを不特定多数のユーザーに送信できる状態にしていたユーザが逮捕されました。そして、著作権法違反幇助という罪状で、ウィニーの開発者も逮捕されてしまいました。いま係争中です。

P2Pは怪しい技術ではない

P2Pという技術は、ウィニーの印象が強いため、「悪いことをするための技術」というイメージを持っている方が多くいます。

これは間違いで、P2Pは「正しく」使えば非常に有効な技術となります。

現在でも、「BitTorrent」という安全なファイル提供ソフトウェアや、「Skype (スカイプ)」というインターネット技術を利用した電話をするためのソフトウェア(「IP電話」という)でP2Pが使われています。

まとめ

これまで、「コンテンツを共有する」ためのさまざまな技術についてご紹介しました。

こうした技術に共通するのは、次のような点です。

こうした点は、最近のインターネットの世界で注目されている「Web 2.0」という考え方そのものです。

みなさんが、今回挙げたようなサービスを使いこなし、インターネット上で充実した活動を展開されることを念願しています。

課題

課題1

「Wikipedia」で、「稚内」「トラックバック」といった言葉の意味を調べてみてください。

課題2

「はてなブックマーク」で、「稚内北星学園大学」のホームページを登録してください。ほかにどのような人が登録しているでしょうか?

課題3

「Flickr」で、「稚内」の写真を検索してください。

課題4

「はてな」上にブログを書き、隣の人のブログの記事にトラックバックしてください。